あまおと/つむ
 
だれもいない浜辺
雲たれこめる朝

ざらざらの風が
砂を散らし

灰色のながれ木は
憧れの骨のよう

足跡をひとくみ
ためらいながら綴る、

消せないのですね
そうかと思えば
風の指先がだまらせてゆく

砂はやわらかく
何かの跡地のようにとがっています

ここで こうして
雨を待ち続けた日々を思い出します
水平線にはいつだって
温かな水を含んだ雨雲がみえたのに
一向に聞こえません あまおと

貝を耳にあてれば
無知のものが舌足らずに歌い
あまく無邪気でくるしい歌声

かわいたおと
骨 ころがります

雨は降らない
知っています そのまま歩いてゆく。
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