あまおと/つむ
だれもいない浜辺
雲たれこめる朝
ざらざらの風が
砂を散らし
灰色のながれ木は
憧れの骨のよう
足跡をひとくみ
ためらいながら綴る、
消せないのですね
そうかと思えば
風の指先がだまらせてゆく
砂はやわらかく
何かの跡地のようにとがっています
ここで こうして
雨を待ち続けた日々を思い出します
水平線にはいつだって
温かな水を含んだ雨雲がみえたのに
一向に聞こえません あまおと
貝を耳にあてれば
無知のものが舌足らずに歌い
あまく無邪気でくるしい歌声
かわいたおと
骨 ころがります
雨は降らない
知っています そのまま歩いてゆく。
戻る 編 削 Point(1)