ミゼラブル/A道化
 




はじめて気がついたかのように、
はっと見下ろしたアスファルトに、肌に、
雨の最期が砕けていて、砕けていて
既に息を引き取った冷たさが明らかで、明らかで
それをわたしは見て見ぬ振り
水玉模様でおどけ続けていたらきっと手遅れになるから
だからわたしおどけています
通りの店の看板や軒先に読み取ることのできる文字を丹念に読んで
誰かが着せた名に込められた誰かの心などを想って涙ぐんだり、せずに
自分の名を呼ぶ誰かを耳たぶで思い出したりもせずに



誰かが明るい冬の一日を歌う、どこもかしこも鼻歌ばかり
わたしはと言えば、どこにいても空耳ばかり
ミゼラブル、と

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