ドットを追って/空中分解
 
暗がりの中手探りで部屋の中を歩く

足が一つ欠けている机が言った

もうすぐ星がつく

二脚の椅子は

それは違う、理由がない

と言った

形だけの窓枠はあくびをしながら

夜中の三時だ、静かにしてくれ

と囁くように言っている

鏡はまるで自分には関係ないと言うように

だんまりを決め込んでいる

それでもみんなが気になるのか

ときおり辺を見回しては

やはり憂鬱だといった感じで

咳払いをしている

そこでぼくも何か言ってやろうと

部屋の真ん中に、あるいは

見当違いに端っこかもしれない

場所まで行って

ぼくは中指をこんなふうに曲げられるんだ

と言って、実際にやってのけた

暗くて見えない

嘘つきだ

とみんな一斉にやじを飛ばした

早く星がつけばいいのに、と

ぼくは思った

でもそのことは口にはださなかった
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