キャッチボール/N.K.
 
「日常」に入った微かな亀裂から波紋が広がる
朝遅刻をした普段は無口な生徒が
買っていたメダカが死んだので庭に埋めたからと
胸中の振り子がめいっぱい振れるように理由を吐露して
生きることの尊厳を突き付けられる
エラーをする内野手のように自分は
飛んで来る言葉に一歩も動けないでいる
逸らした礫が脳裏から離れない
飛んで来る礫なら捌くことばかり考えてきたが
今はせめてしっかりと捕球できたらと逡巡しながら
五十肩の素手で追い駆ける

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