死霊の夜/salco
 
ゆうべ
三時を過ぎた頃
辻々を葬列が通ったのを
お聞きになりましたか
気の早い病葉がかさかさと
先導僧の笏杖に道を払われ
仕舞い残しの風鈴がひと時
うるさく鳴らされたのを?

西洋でも万聖節の前に
ちょうどこんな風が吹くのですよ
いえ、あなたには
風としか見えぬでしょうけれども
お気づきでしょう
陰暦を引いていた私どもの国では
彼岸会後のこの月を
神無月と呼び習わしました

死者は
いや、霊は
ああして己が生滅を嘆くようでも
寂しい、悲しいのではありません
退屈しているのですよ
洋を問わず
不当極まる退屈をかこっている
年さえ取れぬ退屈を


[次のページ]
戻る   Point(8)