虫のこころ/アヤメ
 

心が行き場をなくしたアリみたい
気持ちは飛び跳ねるノミみたい
言葉は風に翻るチョウみたい
僕の目は降水確率120%の空みたい

失くしたものを水平線まで追いかけて
海の上を走って 空の消えるところまで滑って
でも波と戯れただけだった
曇りかけの空と色を分かっただけだった

愛することや好きになることは
いつもいつもラブソングなんじゃない
もっと分かんない気持ちばっかりで
聞きたいラジオの邪魔をする異国の言葉みたい

アリにはアリの心がある
ノミにはノミの気持ちがある
アリもノミもチョウも 小さいけれど精一杯
彼ら自身を生きている

あったものや持ってたものが
消えていったことが分からなくて
でも信じていただけだった
あやふやな光に惑わされただけだった

愛することや好きになることは
いつもいつも旅人の歌なんじゃないかって
きっとそれは真っ暗な空を切って行く
人工衛星みたいな自然にある不自然

そんなことを考えながら
指を刺した小さい蚊を叩きつぶした夕暮れ
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