捨て猫/あやとり
春の朝 世界がすべて色あせた
立ちすくむ 自分の夢を忘れはて
病名は 自律神経失調症
現れた 分厚い壁に 阻まれて
気違いと 蔑む親から逃げ出した
立ち並ぶ 段ボールの街の中
新宿で 温かい手に拾われて
ひさびさの ぬるいミルクに舌つづみ
飼い主の 万年床にもぐり込み
ぬくもりで 氷のとげが解け始め
飼い主の 居ぬ間にたまご一つ割る
塩ふって サニーサイドと生野菜
一匹で 過ごす昼間の長いこと
4時頃に 不安の煙立ちこめる
鍵あける 音でうたた寝「喜」に変わる
乱暴な ノックの音と私の名
母親が 首輪と鎖握りしめ
思い出す 涙の訳と現実を
ビール瓶 二本並ぶと殴る父
理想型 私を押し込む母の顔
おりの中 トイレに出ても怒られる
窓の外 待ってた顔が現れる
もう一度 あの温もりに触れられて
手をつなぎ 夜の帳に身を隠し
現実と 手の温もりで確かめた
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