エノコログサの思い出/山人
君がまだ小さい頃
仕事が一段落すると
すこし秋めいた アスファルトを歩いたっけ
まだ うまく喋れない君の
小さな手を引きながら
やっと歩くことのできる君にあわせ
二人で歩いていた
あたりはエノコログサがいっぱいあって
一本とって君の鼻をくすぐると
ころころと笑い転げていた
とうだい、とうだい
と言う君にそっと渡す
君は一生懸命それを振って
喜んでいたっけ
夕方近かったから
二人の影がアスファルトに映っていた
大きい影と小さい影
小さい影の君は
エノコログサを振っていたんだ
エノコログサが穂を出すと
ふとあのころの君に逢いたくなる
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