電車/日常/自殺/つみき
ブランドやタレントの話を車内の隅々まで届くような量でべちゃべちゃと口から垂れ流している
ふとこちらへ顔を向けた女の子と目が合って薄っすらとした睫毛の下の小さな二つの黒目が一度瞬きをすると、また元の位置へと戻っていった
「だから、ねぇ。あの子、リスカしたらしいよ」言いながら携帯を弄る女子高生の左手にも包帯が巻いてあることに気付いた
軋んだ音と女子高生の声が扇風機が送る風にかき混ぜられる
そういえば女子高生の黒目も女の子の黒目も同じ色をして死んでいた
散々見送った風景は輪郭を失って一色になり、やがて車内も死んでしまった
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