七坂心中/paean
自覚を知りそめのころの、甘ったるい自己憐憫が戻ってくる。数十ヶ月もしたら、もう見たくもないあの鉄刺林の暴力を、わたしが振るうはめになるんだろう。きっと覚悟も決められないまま、そういうことになるだろう。
救いたかった、などと考えてしまうのは侮辱だ。自分の身は自分でしまつさせてほしい。全部承知しているから。その矜持、最後の自任を犯すようなまねを、わたしならきっとされたくない。されたくなかった。
わたしは境界線のうえで動揺している。
わたしは彼らがうらめしい。
正常人が眠ったところを見はからって、わたしは隠したライターを持ち出した。
ドラムをはじく。一度で火がともった。
戻る 編 削 Point(0)