つや/
オイタル
が死にました
妻はしきりに顎を突き出して
冷えたのり弁当を口に運び
息子は肥え太り
嫁は右と左が分からない
ひさしぶりに出会った兄に向けて
まずはどうでもいい話を バスの話を
しきりに語る
もっと違った 大切なお話をなさい
もっとあるはずだ 今であるべき
チョコレートの話とか 畳の話とか
それから たとえば
長く眠っていた父の話とか
そして夕暮れとなり
わたしたちは帰ります
白い木目に沿って
床をまっすぐに踏み鳴らして
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