つや/オイタル
長く患っていた父が死にました
お通夜の部屋に潔い木の香りが流れました
父は長く一人だけの眠りを眠り
お線香はくるくると回っていました
わたしたちはチョコレートを
食べました 金色の銀紙を丁寧にはがし取って
割れるような悲しみ ということを
まずは 避けて
わたしたちの
きれいに四つに切り分けた
西洋なしも おなじように
宵闇は
わたしたちの夢や悔いまでの道のりを
よく取り囲んで守り
お通夜の時までの長い時間を
巻き取って暖めました
老人たちはいつものように笑います
いつの間に老人になったのかもわからぬふうで
とても やさしく
長く患った父が死
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)