こんなことでダメになるなんて/紀ノ川つかさ
自然界の生物は他者に気を遣わず
ただ自分のためにだけ生きている
だからあんなにも美しく燃えて
燃えつきて落ちていくのですね
僕はただ青白く
火はくすぶったまま
消えそうになっているのですよ
それは春さえも迎えずに
周囲で育ってゆく木々をただ見つめて
見つめ続けているのですよ
育っているつもりでもいつまでも
それは僕が木ではなく草として
生まれついているからでしょう
こんなことでダメになるなんて
こんなことでダメになるなんてね
君よ、僕はきっと
抜け殻のように生きるしかないのだから
貝殻を愛するような人であってくれ
君よ、僕はきっと
何かに挟まれて悲鳴を上げ続けるしかないのだから
けだものの咆哮を愛するような人であってくれ
空、高く
空、青く
心地良く秋風の吹きぬける
こんな日に
こんなことでダメになるなんて
人は一人ずつ
生きて
生きて
息づいている
こんな日に
こんなことでダメになるなんて
戻る 編 削 Point(6)