お化け煙突/殿岡秀秋
 
雲を帽子に四人の巨人が
千住の街に立っている
頚に銀色のネクタイをつけて
黒い服を着ている

ぼくが手をふると
こちらをみおろす
狭い路地に入っても
のぞいてくれる

走る電車の窓から見ると
となりの巨人と重なって見える
四人が三人になり二人になり
かっぷくのいい一人になる

さらに電車が進むと
一人が二人に分かれて
三人になり四人に離れる
隅田川の岸でときたま煙草の煙を吐く

風が吹いても雨がふっても
いつも直立している
ぼくが笑うと巨人も微笑んでくれるんだ
なんとなく頼りにしたい気分になる

小学校に入学してぼくが
緊張して座った教室の

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