ショート/ショート/ショート/高濱
 

幸運の切先が彼の外套の端を捉えたとき、

彼には影が無い


嘆きの壁に頭を打ち続ける紳士

彼の首から上は消えて

ビルの中空を縦に漂っている


狙撃された男が立並ぶ

対話室のドアが開閉し

施錠者に電話のベルを打つ


花束が贈られてくる

勿論芳香には十分な毒を盛って

屑籠に投入れる


ピアノを弾いた事のない指が

鍵盤上を忙しなく左右する

彼には譜面が解けない


不運の切先には

彼に語りかける言葉すら残されはしないだろう

外国の切手を除いては

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