ショート/ショート/ショート/
高濱
幸運の切先が彼の外套の端を捉えたとき、
彼には影が無い
嘆きの壁に頭を打ち続ける紳士
彼の首から上は消えて
ビルの中空を縦に漂っている
狙撃された男が立並ぶ
対話室のドアが開閉し
施錠者に電話のベルを打つ
花束が贈られてくる
勿論芳香には十分な毒を盛って
屑籠に投入れる
ピアノを弾いた事のない指が
鍵盤上を忙しなく左右する
彼には譜面が解けない
不運の切先には
彼に語りかける言葉すら残されはしないだろう
外国の切手を除いては
戻る
編
削
Point
(1)