満月の夜に/wako
 
空にポッカリ満月が

月が
月が
月が

幽玄な月が

稜線の上に
屋根の上に
ビルの谷間に
窓の隅に
小さな水たまりにも
澱んだドブにも

無数の月が

ゆらぐ水面に
冷たく光るガラスの窓に
ウサギを信じる幼い瞳に
飲み会帰りの陽気な瞳にも
世をすねて睨めつける瞳にも

「きれいなお月様ね」

心を分かち合う幸せが
ゆらゆらと立ち上る夜
虫の音が響く穏やかな夜
月の裏側の様に冷たい世界を
行き場のない言葉達が転がっていく
淡い月の光をあびて
淡い影に吹き溜まっていく
月のない夜よりも
深い闇を彷徨う頃
月は消えていった
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