ビリジアン/水町綜助
 
しく
ただそこにいた
やわらかい葉をはむ黒い瞳も
犯されながら牡鹿を見つめる不安げなまなざしも
その後の日々、牡鹿を見つめ
しばらくしてほころぶ居場所のない愛情にみちた笑い顔も
牝鹿のどのようなさまも

そして牡鹿は人間であったため
涙を流すことをした
そしてひたすらに
森の中にいる
牝鹿の名を呼び続けた
呼び続けている
















戻る   Point(16)