ビリジアン/水町綜助
 





森へ
つづく道は
つめたくて
きもちいいんだ
冬の
シーツみたいに
白くないし
深く
濡れているけど

たとえば
ビリジアンって
色が好きだった
絵の具
12色が
箱の中
横一列に
ならべられ
そのなかで
黒?
と聞き返してしまう
濃い緑
ところどころ
きらめいた
夜の森の色

どうぶつたちが
跳ね
回ってる
黒く
切り抜かれて
とても精密な
細工があって
ミントみたいな
匂いにならない
匂いがあって
果実は甘く
かじる牝鹿は
一頭、つややかな脂を
毛先に灯らせ
腹がうつくしく
波打っている

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