秋の夜はいつわりを許さない/あまね
 
ぼく、
透明な夜をみあげます
半透明のたましいを宿して
伸びていく木になります

ほしかったものが、なかなか
みたされないから
ほしくないって嘘をつく
あんなもの、いらない
あんなもの、いらない、
もうなんにもいらない、いらない、
後ろ暗いあたりにひびくともなく
ひびいて、ひびわれて

かすれてしまった
夜がひろがって
ぼくをのみこんで
肌を乾かしていく
ふれあうことなしに
色を塗っていく

ほしい、ほしいよ、って
まだ蝉がないてる
いちばん遅くに生まれたから
いちばん強くほしがってる
手に入るとか入らないと
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