地下鉄の/うめバア
ジーンズをはいたあの人を一目見たくて
地下鉄の階段をのぼって、まぶしい光に触れた
淡いブルーのコースターに
カラコロと氷をかき回す
ストローが映って
はっとするほど
あの人は、きれいだった
1984年のあの夏は
だれもがみんなまぶしくて
新しい季節がもうそこまで来ている
もうすぐ私も追いつくと
憧れて、憧れて、見つめ続けた
あれは、9月の一瞬のまま
追いつけなかった、あの人たちは
あんまりにもはやく、過ぎてしまった
私がどうにか、ここまで来るころには
とっくの昔に
声も、やわらかな手首も
真新しい腕時計に
白いテニスラケット
ペールグリーンのタオルに
なめらかな握手
いつまでも、見続けていたい
美しい、あの人のことを
あれは時間の間違いか
ほんの少しのすれ違い
あの人はまだ
向いの文房具屋で
エアメイルの封筒を買っている
私は、だから
地下鉄の
階段を上がったところで待つ
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