さいごの凪/フミタケ
ぶつかってははじけ沈みこまれてく/見えない傷を時は置き去りに
雨の黒さを見上げる葉月の今も/あの娘はきっと放ちきれない愛を胸いっぱいに抱きしめて
僕は不埒で浅はかで疾しいまま/嘘にまみれ退屈に灼かれつづけて
君だけの軸から届く光を拒む手はなく/力まかせのムードには裏切りのキス
浴衣の女の子達が駅を淡く染めていく/街の灯りは夜をキレイに映して本当は違う
他人にも自分にもあなたは興味がないんだわと
会話を重ねるごとにその言葉の意味を/わたしは知りたい/知りたいのよと
ふやけた太陽が沈んだあとに/8月の橋を渡る/女の子達を必死で見ようとして
めまぐるしく何もかもが変わりつづけ/僕は何度も何度も角をまがり/目の前に沈黙がやってきて
9月が来る直前の/さいごの凪
秋からはみんな帰りはじめる/夜の室内へと
女の子達は帰りはじめる/むし暑い夜の橋を渡って
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