aerial acrobatics 15/mizu K
***
ムラサキツバメに失踪する
その前夜にふきあれた豪雨のことを
ながく思いわずらっている
きしり、と
窓はひらいた
ひと知れず
みるまに
カーテンはあおられて
奥の壁ががたがたふるえた
かすかに耳もとにきこえた
いつかのコントラルトが
近づいては遠ざかった
***
あの日は渡りの日とかさなって
そぞろで業務
車をとばして急いだが
おそく
飛び去った彼らの
航跡のなごりがうっすらと確認できただけで
その空には
うすく
ただただ、むらさきいろの群れが
彼らの行く先をなぞっていた
舟の遠景
たかく
雲
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