通行人 A/blue
名前が流れる
片方の羽がない蜂や
スナック菓子の袋と一緒に
名前が流れる
あんたに呼んで欲しかった
あたしの名前
あんなに呼んで欲しかった
あたしの名前
藍色の夜に
ようやく浮かんだ
あたしの名前
なのに
これを絶望と呼ぶにはまだ早いと
皆が口裏を合わせる
絶望はもきっともっと
絶望的であるべきだから
流れた名前を追うのをやめて
あたしは
通行人 A になって
スカートの裾をひらひらさせてみる
名前なんか流して
あたし
あんたの人生の
通行人 A になってみせる
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