うそ百人一首/小池房枝
世の中は常にもがもな渚漕ぐ一反木綿の綱手かなしも
御垣守衛士のたく火の夜は萌え昼は消えつつものをこそ萌え
憂かりけるひとを初瀬の山おろしよ禿げし彼とは思わぬものを
わたの原漕ぎ出でて見ればひさかたの雲居にまがふ一反木綿
秋風にたなびく雲のたえ間より漏れ出づる影は一反木綿か
ひさかたの光のどけき春の日に一反木綿花と散るらむ
春過ぎて夏来にけらし白妙の一反木綿天の香具山
吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風は一反木綿
心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる一反木綿
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ一反木綿しばしとどめむ
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