アルト・リコーダーの動揺/A道化
夜が増えてゆく空に向かう帰り道
心を込めて目を閉じて
アルト・リコーダーを吹いていた
嘗てのこと
夜が増えてゆく空の方角へ
向かっても向かっても届かない、と
示し始めてくれた空の方角の帰り道
心を込めて目を閉じて、痕跡が残るよう丁寧に
旋風を
嘗てのこと
いつか、誰かに対して唇を放っても
音色が
あらゆる色彩の中に満ち続け
あらゆる輪郭線に染み続け
大人になっても続くのだ
という痛々しい信仰の為の
念じるような
旋風を
ふと
目を
ひらいたら
もう大人だった
東から西へ
西へ
西へ
順に夕方が瞑りつつある
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