慈愛の器/洞野いちる
 
慈愛に満ちた器の中で
小さな生命が動いている
朝陽浴びる日を
抱いてくれる愛の手を 求め
器の中で静かに開かれる日を待っている

慈愛に満ちた器の中で
小さな生命は逃げ回っていた
己を突き殺そうとする刃から
手をもがれても
足を折られても
小さな生命は諦めなかった

赤く染まった器の中を
小さな生命が浮かんでいた
光を失い
小さな生命は生命でなくなっていた


(本来、子供は母体の中にいても生まれても愛に包まれて当然の存在なのである。それがいつからだろう。望まぬ子は生まれる前に堕ろせ、生まれてしまった望まぬ子はポストへとなったのは。次々と消されてゆく幼き生命たち。我々は彼らを救うために何が出来るのだろうか)

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