泣きなよビリー/paean
 
 散らばった削り屑をかき集めて呻いた。ほのかな樹木の香りがした。あたしは一個の彫刻になっていた、ことばのかたちにからだを削り上げたのだ。記号の救命艇。戦艦は撃たれて沈み、ことばに乗らない彫刻未満がうようよと海面を覆っていた。船縁にすがりつき、銀の銃剣でなぎはらわれたビリーの右腕、左腕、ビリー!あたしが死にたかった、あたしのほうが死ぬべきだったんだ、あたしはあなたの死骸を拾い、ここへそれを並べてみた。けれどそんなものはあなたじゃなかった。泣きなよ、ビリー。歌ってよ。あたしにあなたの声は出せない。押し戴いたものは無言で、樹木の香りをたてる屑だった。
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