朝/マチムラ
また朝が巡ってきて
僕らは波打つシーツの海から
再び生まれる
自分が何者か知ることもない一瞬が
シルル紀の珊瑚虫の記憶から始まって
母の乳房の感触まで辿ってゆき
白く洗い清められた光が
レースのカーテン越しに
見慣れたはずの部屋を映し出すと
やりかけの昨日が逆に僕を確かめている
永い永い旅の後のような深呼吸をひとつ
そうして目を開くと
昨日の連続であるはずの今日が
こんなに細部までくっきりと整って
どれもこれも
触れればしっかりとした質量をもち
光でさえも手を伸ばせば掴めそうになる
どうしてこんなことが起こったのだろうと
自分で自分を訝しがりながら
宇宙と地球の運動がいったいこれから
どこへ連れて行ってくれるのだろうと
期待しながら
ひとつの真理が僕の胸にすとんと降りてくる
僕はまた生まれ変わったのだと
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