煙幕のような雨/kauzak
 
煙幕のような雨を見ている
事務所の中から濡れる心配もせず
一枚の絵を見るように安穏と

 その雨の中に入って行く
 傘など用をなさずに
 あっという間に濡れ鼠になって

 髪から滴り落ちる
 頬を弄り流れる
 服を通して身体に張付く
 雨粒の感触を想像してみる

一線を越えてしまえば
不快な感触も快感に変わるのだろうか

息をすることすら遮られそうな
圧倒的な雨の中
それでも濡れ続けていられるだろうか

雨の中に飛び込む気なんてないくせに
濡れることは決してない事務所の中で
妄想している

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