あかい蛍/
佐野権太
真夜中のきみの痛み
どんな言葉も選べないから
表情だけを送り
そして
きみの表情を受け止める
時間差と記号
最小限の情報のなかに
くのう、なきがお
そして、きみの
ありがとうを理解する
てあて
手のひらをみつめる
言葉の意味を反芻して
火照った中心から
透明な無力を発散させている
窓を少し開いて
降りつづくあめを呼吸する
かすかに点滅する、あれは
ぼくら、あかい蛍
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