重いもの/ヒロシ
 
一人立ちつくす
嘘みたいに静かな
夜明けの街

がれきの間から吹く風

右肩に背負った
黒くて冷たくて
重い鉄の塊

いつしか感情さえも
死にかけて

だけど
あまりに美しい夜明けの空が
僕を悲しくさせた

出来ればここに
捨ててしまいたい

だけど捨てれば
僕が殺される


君に逢いたい

平和な
あの海辺で
口づけをして
抱き合いたい

胸の奥に生き残る
かすかな想いが
僕を生かそうとする

また朝が来れば
感情を殺して
敵兵を殺す

そして夜にはまた
静寂の中の
残酷な悪夢で
声にもならぬ叫びを
響かせる

生と死が隣り合わせのこんな場所で
僕の心は朽ち果てていく

まるで地雷を踏んだ戦車のように

無表情のまま
無感動のまま

僕はここに
消えてしまうのだろうか


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