カブトムシ/ぎよ
 
曇天の下
ビルの間を一匹のカブトムシが飛んでいた
その様子はひどく不恰好だ
少年たちの憧れの的であるあの角でさえ
滑稽に見える
ビルの壁に何度も何度も激しく体をぶつけながら
行きつ戻りつ上昇下降を繰り返している
なんともあわれな光景である
僕はそれを見て
あの女(ひと)に対する自分の愛のようだと思った
一筋の涙が頬を伝った
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