環境論V(心臓がなくなってから生きた人 より)/ヤオハチ
 
海の日になると
生まれる前のことを思い出す

人ごみの中にあなたは居て
人ごみの多さがあたしの罪

生まれた時にはもう
消せない刺青があった

星は数え切れなくて
誰のせいでもなかった

息をして
牛乳を飲んで
たくさんのあなたと出会って
最後にはつぐなった

月曜日には夏が来る

夏は染み込んでくる

ピスタチオの入ったざるを持ち上げて
生ビールとトライアングルになるみたいに置いて

飲み干した欲望が
じょじょにあたしを狭くして
また
海の日がくると
もう
二人で居たいと言ってしまう

海の日には
うみの向こう側に居る人のことを考えなさい

さされた釘と
生まれる前からの闇が広がって
夜と区別がつかない

あたしはただ笑う

くくりつけられてからの日々を
ひとしきり笑った後では
この地面に

片足でさえも 立てますように

うみの向こう側に居る人の幸せが

うみの向こう側に居る人のものでありますように

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