音のない洞窟( 足裏マッサージ編)/吉岡ペペロ
 

すよ、ただ正確に言うと、こんな夕日を、いろんなところで見てると、自分が愛おしく思えるんですよ、

ナルシストなんだ、

いえ、そういうんじゃなくて、自分をしっかりと、自分の速度というか領分で、確認できるって感じが好きなんです、変ですかねえ、

日本帰ったら飯でも食いに行きましょう、

サエキさんはそう言ってまたじっと西日を眺めなおした

シンゴは自分が旅の好きな学生だった頃を思い出していた

日本いがいの場所にいると自分がここにいるという感覚が実感として湧いた

旅を経て日本に戻ると今度は日本にいてもその感覚が湧いた

シンゴは中学に入るまえに親と死別し親戚夫婦のもとで育てられた

そのこともガイドになったことと関係しているような気がする

でも、今のオレはどうだ、全然じゃないか、

自分が今どこにいるのかに興味を失ってしまっているのだ

ヨシミ、ヨシミ、ヨシミ、

シンゴはそう呟いて前をすぎるひとを目で追っていた

影絵のようだ

それを目で追っているともういくら歩いてもヨシミに会うことは出来ないのだと思った
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