音のない洞窟( マレーシア到着編)/吉岡ペペロ
バーに進んでゆくと
ああ、こんなところにも青が、
バーのなんでもないところの一部が青いひかりで装飾されていた
悲しかったんだよ、ヨシミ、悲しかったんだよ、オレ、
シンゴはその青に突撃するようにお客さんを先導して進んだ
あの青を、ひとりぼっちに出来る訳ないじゃないか、
アルコールをやりながら寛ぐお客さんたちに明日の集合場所と時間の確認をしていった
あくびがなんどもでた
シンゴは涙のようなものを流しつづけそれをそっと拭きつづけていた
バーの青い装飾を見つめた
さっきの水上生活の明かりが青一色であったような気がした
そしていつものように、ヨシミ、ヨシミ、ヨシミ、と唱えはじめていた
これほどの孤独のなかにまだ青という色を見つけている自分が大丈夫であるのかそうではないのか分からなかった
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