フネ/yumekyo
 
焼け跡の町に響き渡る槌音 
鋼鉄の爆ぜる音 クレーンが上下する音 
再開なった船渠に 巨大な 鉄の フネが 
進水を待っている 
小学校の青空教室をこっそり抜け出して 
造船所の裏山へ毎日通いつめた少年は 
やがて自らこの巨大なフネに乗り 
天然の良港であるこの入り江を出て 
見知らぬ 広々とした 大海とその向こうにある大陸へと 
見えんことを 誓った 
渡る雲すら引き千切らんとする そそり立つ艦橋を 
水平線の彼方まで収めんとする 広大なる甲板より 
日々見上げては吐息もなく絶句したのは 
まだ罐炊きとして乗船した駆け出しの頃 
巨大な 鉄のフネは 航海の度にあち
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)