理由/
小川 葉
理由があって
朝まで駅で過ごした
ベンチの下に
甲虫が死んでいた
裏返っていた
始発まで眠り
目を覚ますと
甲虫が裏返ったまま
手足を動かしていた
生きていたのだ
理由もなく
始発の汽車に乗る
甲虫のその後は知らない
その後の私も
生きていたことも
誰も知らない
その理由も
戻る
編
削
Point
(6)