ボウは嵐の夜に/こん
 
ボウは嵐の夜に
振り落とされたのだった
黒雲の闇からまっさかさまに
大海原へぼとりと落ちて
荒れ狂う波間に沈んでいった
      
気がつけば
波の切っ先が岩を削る
歩いただけで
足裏から血の滲む岩浜
 
ようやく見つけた
からだひとつぶんの砂地で
昼は波光を
夜は漁り火を
切なく見つめるばかりだ
        
たえずボウを悩ませる
亡霊たちも静かな日は
波打ち際に
錆びた鉄の扉が現れて
無理矢理ボウを引き吊り込む

扉の向こうは広がる荒野
彼方に煙る赤土山脈
ボウめがけて激しい砂嵐が迫る
たちまち鼻も口も砂で塞がれ
息もできない
飛ば
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