夏の実/
砂木
カラのコップに残る
冷ました 後の氷
気体になって 闇になり
朝方から 光に変わっていく
眼から光は入り
指先から 出ては
小さな声で笑う
寝癖で まとまらない髪の中
つぶやく かれんぼの押し殺した声
朝焼けと蜂蜜をまぶした手のひら
耳たぶから 頬を撫でる
赤味が薄くさした宵口に
甘い匂いの月が満ち
がりっと かじった
皮のめくれた 桃が露と
したたりながら
唇を
コップに残る ひとしずくは
なまぬるい眼
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