雨の溜め息/殿岡秀秋
 
雨の一粒ひとつぶは
空気を孕んでいて
引力にひきよせられて落ちるときに
真ん中に窪みができる

屋根から
下がる糸の鏡に
することもない子どものものおもいが
写しとられる

傘から垂れる
水のカーテンのしたに
庭の赤土の上を流れる
大河を見る

水はどこまでいって地球にしみこむのだろう
ぼくは流れていって
どこにたどりつき
何者になるのだろう

矢守が草からワニのようにでて
河を渡るときに左右を見る
ぼくにこころ震える用事を与えよ
傘にふきかかる春の雨の溜め息


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