[小さな風]/東雲 李葉
 
小さな風はどうしたの 鈴虫さんに道聞いて 迷子になってしまったの



お母さんが歌ってくれたその唄にはいつも続きがなかった。
子供の風がどうなってしまったのか誰にも分からない。


私は大人になった。
弟が生まれたときにはもうそうだった気もするが。
ともかく、法の定める成人をとうに超した。
母の胸に抱かれることはもうないだろう。


だからといって、何か小さな生命を抱くことはなく。
なんとなく生きて、なんとなく喘いで。
なんとなく無益で受動的な日々を過ごしている。


小さな風はどうしたの


なぜ大きな風は一緒にいないの?
母はいつから
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