愛の夏ーとあるあいすべき捨て鉢猫への想い/水町綜助
 
いま、
とても大事なことをひとつ思い出したんだけど
それなんだっけ

こんなに晴れた夜の
誰もいない
隠された路地と
その横にだだっ広く広がる運動場の中には
ほったらかしの
ナウマン象みたいな重機が
博物館みたいに開陳されてて
その足もとには
チカリと光ってあるかもね
それをひろったのは
たぶん俺の手じゃなくて
たぶんいま俺をさわってるきみの
(忘れないうちにこれをしるさなきゃならないだから俺はいまこうしている)
やさしくて、体温高くて、いくらか自由に俺を動き回るけど、まだ少しおびえた手
俺の肌と布
そんでひらかれた手のひらの
ほんのすこしの空気
そのふる
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