デートは延期になりました。/士狼(銀)
 
 息を止めて苦しくなって初めて生きていることが実感できる、みたいなのを描いたら一日置いて思っている以上に近いところに本物の死が笑っていることに気がついた。本物、っていうと偽物がいる気がしてアスファルトに投げ出されたままの体で考えてみたら、ぼくにとってそれは睡眠なんだろう、と思うに至った。気がついたらぼくの視界からは青い空が見事に消えていて、黒くて熱いアスファルトと赤い水溜まりしかなかった。あれ、頭は打っていない筈なのに視界が白くなってきたのは何でだろう。ぼくに触れているのは誰?

 ぼくが意識をなくしていたのはごく僅かな時間だったに違いないのだが、そこからは轢かれた瞬間以上に訳がわからなくて救
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