暗夜行/飯沼ふるい
 
遠く渚の白波が
さよなら告げるよにさざめいて
町の子どもの線香花火
夏を焦がして昇る思い出

古里は離れて尚もここにあり
暗い微熱に慕情が火照り
振り向けば妖しき街灯
誘う別れの一夜露

 親しき疲れを背負い込み
 朱火の光に何をば求めん

古里へ帰らぬ足で暗夜行
忘れた日々を背負い込み
二車線の国道 その行方
知らぬは運命(さだめ)と一人ゆく
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