きつね 二題/オイタル
【アカマきつね】
そのお社は
今は大きなスーパーの駐車場になっていて
たくさんの乗用車が窮屈に並んでは
ふうふう息をついています
(アカマきつねです)
蝉の声が木々に焼き付く田んぼの道を
陽も疲れた夕暮れを背負って歩いていきますと
藍の絞りの手ぬぐいで小さく汗を拭いて
歩いていきますと
風も動かぬでこぼこの道を進みますと
オニオウ参りと言って
リアカーをやっと引けるようなでこぼこ道の行き止まりに
仁王様の小さな祠があってですな
油のような汗を流した一日
背中で夕立の気配を嗅ぎながら
そこを拝みに行くのですが
おまちかね
雨も降ってくるので
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