東京 2004/英水
 
桜は冬に似るものだ
全ての赤血球が重たくて だるいのです
路上で 赤血球を磨いていた 彼女は 路上にそれをぶちまけた
死んだ魚の目をしたそれは 坂を転げていきました
それでもまだ 欲情しているらしいのです 

冬は桜に似るものだ
全てのビルがだらしなく弛んでいます
ビルの中で輪郭を宿していた彼は 路上に彼をぶちまけた
薄青色の静脈が 歩道に根を張りました
それでもまだ 欲情しているらしいのです

かなしみは冬に燃えるのだ
遠くで音は 絡み合って 玉になり 
あらゆる冬で 初熱し 路上で回転しています
退屈そうな毎日は 膝を抱えてうずくまり それを静かに眺めてた
それでもまだ 欲情しているらしいのです

バケツん中に 毎日を飼育しているのです
ぐるぐる回転して 重たくて だるいのです
貫通すると 痛いんです

それでもまだ 欲情しているらしいのです

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