雪仏/paean
 
 この季節にはめずらしく、お空の青い日でした。上人さまがいらしったときにはもう、わたしの指先はつよい陽射しにあてられて、だるまのようにずくずくと溶けはじめていました。墨染の衣の上人さま。ずっと待っていたのです。上人さま、粉でもはたいたようなお顔をきょうは薄紅に染められて、塔も堂もない空ばかり、鳥たちの巣へ帰ってゆこうとするなかを、お歩きになっていなさった。ご友人の屋敷のお庭の、ようやく開いた梅をさかなに、お酒もついつい進んでしまわれたのでしょうか。

 大きなおみ足が目の前をさっさと通り過ぎてしまいそうになるのを、わたしはようやく呼びとめました。おや、雪仏。そうつぶやいて上人さまは、この溶けか
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