開かない扉と刃物/もずず
 

わたしは
だれ
だったかな

忘れたくないのに
薄れていく

赤々としていたのに
薄くなり
桃色になり
白になり
無色になって

鋭い刃物に
怯えて

色も体温も
失っていく

扉が
開かない

閉じ込めるつもりなど
これっぽっちも
ないのに

重い扉は
なかなかどうして
開く気配が
ない

錆びて
朽ちる

そんな想像をしながら
今夜も
刃物を研ぐしかできない




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