卑猥な月/天野茂典
 
 


  剃刀で切り裂いたような
  三日月が女子大校舎の上にでていた
  疾うに絶滅した狼でも泣きそうな室温18度の秋桜
  女が欲しい 女の肌が恋しい
  なぜ女なのか なぜ街なのか
  分からない 本能だ
  本能が涙を流して泣いているのだ
  昔人間が男女(おめ)だった頃二つに切り裂かれた怨みだ
  毀れてしまったおおくの冤罪
  壊れものとしての人間の血脈
  唇はいつも血の味がする
  乱れて 乱れて
  壊れてしまった繊維のように女と深く塗れたい
  銀杏並木の落ち葉踏み 黄色くなったっていい
  溶け合いたい 合体したい
  びしょびしょ
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