Note./士狼(銀)
○首のないラットの幽霊――目撃者多数。証言1。深夜になるとラボの実験台の上を走る音がする。証言2。自分以外いない筈の部屋でゴトン、と音がする。証言3。音の方に目を向けるとしっぽがちらりと見えた。証言4。ラット室から逃げ出したと思いしっぽを捕まえたところ静かに暴れるそれには首から上がなく、それがいたところにはラットの頭部が落ちていた。隣の女性講師が飛び降りたのはこのためと言われているが定かではない。
○双子の老婆――片方は死んでいる。
○牛柄の猫――昼間は生きているのが不思議なくらいに弱々しい眼をしているが、夜中の国道でこちらを向いたそれはぞっとするほど鋭い光を放っていた。その光はタペタム層の反射だけでは説明がつかない、なぜならその視線に刺されたぼくは畏怖すら感じたのだ。猫の眼は別の世界への扉だと聞くが果たしてあの牛柄の猫はいったい誰を連れて行ったのだろうか、今はもう見かけることがない。ぼくはただ、「待っている。」。
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